とくに、変更時、変化点は異常が発生しやすいので、その内容に着目して重点的にチェックすることが大切である。例えば、新製品はすべての品質項目を検査する、朝の始業時には設備の条件確認と、初物(その日の最初に作った品物)の品質確認などを実施している。
 また、一人の作業者が多工程、多数の機械を担当しているような場合には、チェック時点になったら機械が自動的にストップし、品質確認をしないと再起動できないようにしている。さらに品質確認をやりやすくして、不良品を見逃さないための工夫などを行なっている。
(3)異常処置
 異常とは不良品の発生や要因である人、機械、材料、方法、計測、環境について予期しない変化が発生した、いつもと異なる状態のことであり、これに対して処置をとらないと不良品を作りつづけ、お客様に迷惑をかけることになる。
 先ず、「異常とは」の判断基準を明確にすることが大切で、作業者に、@いつもと違うと感じられたとき、A見なれない不良品、初めての不良品がでたとき、B同じ不良品が2個、3個と連続して発生したとき、C良否の判断が難しいとき、D設備、治工具の不具合を感じたとき、E今まででていた不良品がなくなったとき、などを異常としてその内容を教育し、作業者からの異常が打ち上がりやすくする。
 また、異常を見逃すと、お客様にどういう迷惑をかけることになるかを説明し、その重要さを訴える。異常が発生したときには現地、現物で教えることが大切である。
 万が一、不良品が発生したときには、発生してしまった不良品の応急処置(不良品がお客様のところまで流れていかないようにし、お客様のところまで行ってしまったときはすばやく良品と交換するなど)と、2度と同じような不良品を発生させない、また、流さないようにするための再発防止処置をとる。
 作業者にとってみると異常は出したくないという気持ちが働くことから、一般的に異常報告がでにくい。そこで、異常は人のミスによるものではなく、管理上の不備によるものであることを教え、管理者は異常報告の打ち上げに対して感謝し、誉めるようにして異常が打ち上がりやすくする。また、必ず異常に対する再発防止処置をとり、作業者の期待に応えるようにすることが大切である。異常報告がでやすいようにするために、異常発見者を表彰する制度を設けているところもある。

4.不良の原因となるミスを犯しにくくするためのしかけ
 不良品は人のミス、材料・部品不良、機械や設備の故障、加工や組み付け上のばらつきによって発生する。そこで、これらの職場環境を整備して、常に正しい状態で仕事ができるようにして不良品をつくらないようにする。また、異常や不良品を発見しやすいような状態にすることが重要である。そのためのしかけが5Sや目で見る管理、そして、ポカヨケである。
 5Sとは、人のミスを発生させないようにする、あるいはムダな仕事をしないようにするための環境づくりで、@整理(必要なものと不必要なものとを区別し、不必要なものをなくする)、A整頓(必要なときに、必要なものが必要なだけ取れるように、正しい置き場やレイアウトをきめる)、B清掃(ゴミ、汚れ、異物などをなくし、きれいにする)、C清潔(整理、整頓、清掃を徹底し、繰り返し、衛生面、公害面も含めてきれいにして保つ)、D躾(きめたことが守れる習慣付け)のことをいう。
 また、5Sが維持されている状態を管理するための手段で、誰にでも異常がわかり、注意や指摘のできるしかけのことを目で見る管理という。図2はその例である。
 また、ポカヨケは人的要因(不慣れ、ぼんやり、うっかり、勘違い、横着など)や作業環境(あいまい、乱雑、使いにくいなど)による人に関わるミス(ポカミスという)を防止するための機械的なしくみのことである。ポカヨケの考え方を図3に示す。
 5Sを徹底するためには、きめごとを守るようにする環境づくりと習慣付けが必要である。目で見る管理やポカヨケの改善は、その職場で働く人の品質意識、問題意識、改善意識から生まれる。ミスを防止し、ムダをなくすための改善、それは職場の全員の知恵と工夫からなる継続的改善の積み重ねによって実現される。

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