安全とTQM
TQM導入以来の安全管理活動の推進を顧みると,図-2のような教訓を学びました。
- 頭で考えただけではなく実践に裏付けられ,実務的な安全の仕組みを一つずつ整
備し,誰もがわかるように目に見える形に標準化しなければ,安全の確保はおぼ
つかないこと。
- 標準に照らし合わして改善していくことが原則であること。
- サプライヤーやパートナー,協力会社が自ら主導し,自らの意志に基づく自主的
な活動が,地についた安全管理活動の持続性を保証すること。
- 教育に始まり,教育に終わる。無手勝流にならないように,TQMの全体像,そ
の狙い・フレームワーク,原理・原則を修得し,改善のスキルアップを図らなけ
れば,実質的な安全管理の仕組みは構築できないこと。
- トップのリーダーシップのもとで強い意志が公開され,透明性をもって隅々まで
浸透していくことが,安全管理に対する意識の改革を飛躍的に進めること。
- 数あるTQM活動の選択肢から重点を絞り込むためには,TQMの全体像を知ら
なければ的確な舵取りば不可能であること。
これらの観点から,TQMの一環として安全管理活動を進めることが肝心と思います。
エピローグ;卓越した組織を目指して
安全の仕組みの地道で不断の改善と実践が,協力会社の参画のもとで進められ
ました。そして,安全管理の仕組み構築の過程で,卓越した組織へ導くシナリオ
は,TQMがベースであることを学びました。本編を締めくくるに当たり,TQ
Mの狙いとフレームワークを図-3に紹介します。
TQMの狙いの第一番目は,組織目的の達成への貢献。
それは,存在感のある組織の実現,組織使命の継続的達成,そして利害関係者と
の良好な関係性・満足度の向上を意味します。
二番目は,顧客満足の高い品物とサービスの提供。顧客の視点で,質の追究を極
めなければなりません。
三番目は,コア技術・スピード・活力という,組織力の向上を図ることです。
そして,この狙いを実現するフレームワークをしっかり認識し,自組織の現状と
対峙させて,TQM推進の重点を絞り込んでいくことが大切です。各組織各様の
経営改善のスタイルがあると思います。当社の場合は,TQMに軸足を置き,変
化に強い人創り・企業創りのためのツールとしてTQMを活かし,経営改善を進
めてきました。
大変革の再編時代を迎え,企業として財務面・技術面の力が問われています。品
質問題を発生させない仕組み,さらには企業倫理などに対する様々な企業の対応
とその変遷を見聞すると,TQM推進のやり方は千差万別ではあるものの,TQ
Mが狙っているところは,組織経営を誤らせない,いわゆる王道であるとの思い
を深めつつあります。
皆さんの組織がTQMを活かすことにより,卓越した組織へと着実な歩を進める
ことを心から念じつつ,筆を置きたいと思います。